今年の5月中旬。
昼休みに雑草抜きをしていたところ、1人の女性がタオルに包んだ動物を連れて来ました。
中には手の平にすっぽり納まる小さな仔猫がいました。
見るとまだ目も耳も開いておらず、鼻からは出血した跡。
保護した女性宅にはたくさんのわんちゃんがいて、さらに仕事をしていらっしゃるので
世話をすることができないとのこと。
色々と話し合いをした結果、院長が仔猫を育てることになりました。
かろうじてミャアミャアとなく仔猫。
弱々しく、もしかしたらもうダメかもしれないってくらい小さな子でした。
まずはひどい目やにだったので、院長が抗生物質を注射し、続いてミルクの頻回投与を開始。
どうもうまく飲めないため、シリンジで何度もあげているようでした。
ミルクやりは大体2時間間隔。
これだけ小さいと授乳間隔が開くことによって低血糖が起こる可能性があるとのことで
院長も必死です。
…寝れません。
仕事中ももちろん気を張ってるし、これでさらに重症患者が来たら…。そう思うと
さらに緊張します。
そんな毎日が始まりました。
【保護した直後の仔猫】
必死に世話した結果、目やにもすっかり良くなり、ミルクも哺乳瓶から飲めるようになりました。
【保護から2週間目】
「ミュウ」
仔猫の名前です。私達の娘が名付け親になってくれました。そして、子供もまた
ミュウの成長を見守ってくれました。
そして保護してくださった女性は、時間を見つけてはご友人と仔猫の面会に来て下さいました。
ミュウがある程度成長したところで、素敵な里親探しポスターも作ってくださったのです。
その成果あって、たくさんの里親希望の方が連絡を下さいました。
その中から、ミュウはとうとう心優しく温かい御家族に引き取られることが決まりました。
【ポケットに入るミュウ】
あんな手の平にすっぽり入ってしまうような生まれて間もない仔猫が…
たった150gしかなかったミュウちゃんが、600gにまでなりました。
引渡し当日。ミュウを飼うにあたっての説明と共に、私達はある大切なものを渡しました。
保護した方達が作ってくれたアルバムです。ミュウちゃんが小さい頃を新しい飼い主さんが
知らないだろうから…と想い出に作ってくれたものでした。
そして最後のページにはこんなメッセージが。
仔猫の里親になって頂き
本当にありがとうございます。
仔猫は○○駅近くの線路沿いの車道でうずくまっていました。
何台もの車が仔猫をまたいだりよけたりして走行していました。
そんな状況でひかれずに済んだのは奇跡かもしれません。
そして親切な獣医さんに巡り会えたこと
心優しい飼主さまに出会えたこと
本当に幸せな仔猫だと感じます。
どうか、飼主さまと仔猫が信頼関係を築いて
良きパートナー、家族となることを切に願っております。
私、すっごく感動してしまいました。
ミュウちゃんは本当に奇跡の子だなあ、と。
こんなにも色んな人に助けられて、そして優しい飼い主さんとぬくもりある場所に出会えて。
たくさんの人と繋がっていると感じた瞬間でもありました。
ミュウの成長を見続けてきた私達の娘も、ミュウとその飼い主さんあてに手紙と絵を描いて
渡しました。
渡した瞬間、娘は抑えてきた感情があふれてしまったのか…大粒の涙がこぼれ落ちてました。
別れることが寂しかったのでしょうね。
けど、悲しい別れではありません。とっても喜ばしい別れ。
子供にとってもいい経験になったのだと思いました。
長文になったので後編に続きます。
ある仔猫の物語 前編